辻本好子のうちでのこづち
No.152
(会報誌 2007年11月15日号 No.207 掲載)
私と乳がん(66)
ようやくホルモン剤が変更に
原因がわかると痛みまで楽に
2005年5月初旬から悩まされていた左指関節のこわばりと左ひじから左肩に走る痛みの原因が、どうやら服用中のホルモン剤の副作用らしい……。5月下旬の受診でようやく犯人の顔(?)がぼんやりと見えてはきたものの、副作用であるという決定的な根拠にはたどり着けませんでした。主治医との話し合いで、直ちに服用中止しなければならないほどの辛さでもないことと再発転移を抑える薬効(メリット)を天秤にかけると、「やっぱりしばらくそのまま服用しよう」という結論に達しました。決して納得できたわけではありません。いわば再発転移の危険と隣り合わせの妥協の産物。結局、いましばらくは『アリミデックス(ホルモン療法剤タモキシフェン)』を続けることになりました。
当然のことながら、その後も毎日、指のこわばりと痛みで目が覚めていました。しかし、たとえ漠然とではあっても原因らしきものが見えてきたことで、不安に振り回されることはなくなりました。<ひょっとしたらリウマチかしら?>という無為な心配が消えただけで、不思議なことに痛みまでそれほど気にならず、気持ちはずっと楽になりました。そうはいっても、やっぱり毎日のことです。<このこわばりや痛みは、いったいいつまで引きずっていくのかしら?>という小さな疑問と、すっきり納得できたわけではない心のとげを服用する間ずっと抱き続けていました。
すんなり薬が変更
そうこうして3ヵ月が過ぎ、次の受診日の2005年9月27日。
診察室で主治医と向き合うと開口一番、私から「ずっとこわばりが続いている」ことを伝えました。そして、思い切って「元のホルモン剤に戻してもらえないか?」と切り出してみたのです。すると意外なほどあっさりと「そうですねぇ、変えてみましょうか」と抵抗(?)の気配もない意外なお返事。どうやらあのあと、ほかの患者さんから同様の訴えがあったり、ほかの病院のドクター仲間からも同じような情報が届いていたりで前回とは少しお気持ちに変化があったよう。「それでもなお!」と押し切れなくなっておられたのかもしれません。
それでも多少の未練があるのか、主治医は改めて今まで服用していた薬についての詳しい説明をしてくれました。9000例の治験で『ノルバデックス(以前に服用していたホルモン剤)』の再発率を<1>とすると『アリミデックス』は<0.82>。生存率には特段の有異差はないが5年ほど前から市販されている現在最も優れたホルモン剤であることを強調。そのうえで「元のホルモン剤に変えてこわばりが軽減しなければ、一時、服用を中止して体を元に戻しましょう」と提案がありました。
そして、さらに主治医からの提案は、この際、元のホルモン剤(「ノルバデックス」)に戻すのではなく同じ作用の別の薬にしてみようと、結局、タモキシフェンを主成分とする『タスオミン』というホルモン剤が処方されることになりました。
薬をかえると半額以下!?
病院窓口で会計を済ませ、いつもの薬局へ処方箋を持参してしばらく待っていると名前を呼ばれました。カウンターを挟んで薬剤師さんと向き合うと、いきなり「今日はお薬が変わったようですネ」と問われ、「ハイ、はっきりはしないのですが指のこわばりが辛く、どうやら副作用らしいということで変えていただくことにしました。この薬を飲んでいらっしゃるほかの患者さんから何かお聞きになっていませんか?」と私。しかし、薬剤師は首をひねるばかりで私の問いには何の答えも反応もありません。そこで「今回の薬は前の薬(『アリミデックス』)と何が違うんでしょうか?」と尋ねてみると、「しばらくお待ちください」。
奥のコンピューターで添付文書をプリントアウトしてこられ、手元の文献を見ながら「主成分は異なりますが、悪いホルモンの増殖を抑えるという薬効に変わりはありません。副作用としてあげられている項目もほぼ同様です」と説明してくれました。そんなやりとりをしたあとの支払いの段で請求額を聞いてビックリ!
それまで『アリミデックス』が3ヵ月分処方されていたときに薬局で支払う全額は18,230円(保険点数6078点、調剤基本料など薬剤料以外の点数を含む。3割負担)でした。ところが今回の『タスオミン』の請求額はなんと8,520円(2840点の3割)と、まさに半額以下だったのです。ビックリして、一日当たりの薬代として換算したときの金額を尋ねると以前が640円(1日1錠)で、今回は282円(単価141円を1日2錠)になる計算だと教えてくれました。そこで「これはジェネリック医薬品なのですか?」と問うと、ふたたび文献に目を落として、「さぁ……ここには使用成績調査などの副作用発現頻度が明確となる調査を実施していない薬だと書いてあります」と、内容のままを読んでくれました。
添付文書を薬剤師から患者に手渡せないことになっている、と説明がありました。でも必要ならインターネットで検索することもできます。とりあえず知りたい情報は薬剤師さんからいただくことができたので、それ以上追い詰めてはいけないと思い、「ありがとうございました」と礼を言って支払いを済ませ、3ヵ月分の薬を受け取りました。