辻本好子のうちでのこづち

No.073

(会報誌 2001年3月15日号 No.127 掲載)

意識を高く持つ医療者の広がりを期待

心理教育の研究会に参加して

 2月23〜24日の2日間。『心理教育・家族教室ネットワーク第4回研究集会』が大阪国際会議場で開催され、全国から500人以上の精神科医や看護職、ケースワーカーらが集まって熱心な議論が展開されました。研究会発足時から及ばずながら世話人の末席を汚し、今回は大阪が会場ということで実行委員を仰せつかりました。
 1日目にはCOMLのボランティアのお二人とともに分科会に参加して、ややもすると専門家たちの自己満足に陥りがちな議論や研究発表を「家族の立場」から厳しく評価し、率直なフィードバックをする。そして、2日目の最終プログラムの総合総括指定発言ということで、全体の感想と今後の期待を述べました。
 そもそも「心理教育」の定義は、慢性疾患に代表されるような「継続した問題を抱える人たちに対する教育的側面を含んだ一連の援助法」ということで、“その人”がどんな体験をしているかということを配慮しながら、援助を受ける人の気持ちに沿っておこなわれる相互交流。つまり医療者側からの“—方通行”ではない協働する人間関係づくりが最大のポイントであり、彼らのテーマです。だからなのか、ここに集う人たちには、医療者にありがちな「高見から操作・介入する」姿勢や意識はあまり見受けられません。こんな医療者たちばかりなら、どんなに患者は安心できるかと参加するたびに感じますが、こうした研究会に参加する意識のない医療者が多いことの方が問題。これは、自主参加の勉強会や会合などで、常に語られる言葉です。

医療者の意識で支援

 一昨年、旧厚生省の研究の一環としてエイズ拠点病院の医療評価でいくつかの病院を訪れたときも「相談室」のケースワーカーの意識の違いに同じようなことを感じました。患者がどんな医療者に出会えるかは、運命に近い偶然性が伴います。 HIV患者が受診した病院の「相談室」のケースワーカーの意識が高ければ、密度の濃い情報と個別性を尊重した支援が得られるが、役割意識の低いケースワーカーだと、社会資源も十分に活用できないばかりか、心の支援もさっぱり期待できないといった現実を目の当たりにしました。
 HIV患者よりも精神障害者の絶対数が多いだけに、地域の精神科病院や社会復帰施設などで働くスタッフの意識によって、患者の支援に差が生じるのは問題です。それだけにこの地味なネットワーク研究会に、もっと多くの医療者が参加して欲しいと思います。
 最後の討論で、参加者から「名簿作成」が提議されましたが、懸案事項のまま未だ結論が出ていないようです。COMLにも「いい精神病院を紹介して欲しい」という電話相談が届きますが、病院紹介・ドクター紹介はしないまでも、たとえば名簿があれば「この病院のスタッフは心理教育・家族教室に関心を持っている」という情報が提供できます。病院を選ぶ、何の手がかりもない状況の患者さんにとって、せめてそうした情報があると選択の一つの基準にもなるでしょう。広告規制緩和による医者の出身校を知ることよりも、医療スタッフの意識の方が、より確かな情報ではないかと思います。