辻本好子のうちでのこづち
No.051
(会報誌 1999年3月15日号 No.103 掲載)
寝たきりゼロヘの10か条
実は“10箇条”のヒントでした
『医者にかかる10箇条』を発行して半年余り。厚生省版として45,000冊+40,000冊。そして、日本財団の支援分10,000冊とCOMLの自助努力による10,000冊、この20,000冊にはCOMLの発行責任を明記しました。さらに健保組合からの特注ということで、この半年間で12,000冊ほどを増刷しています。「1億3000万人の国民に対して、たったそれだけ!?」と言われてしまえば、たしかにそうですが……。それでも出版業界でいえば、ベストセラーになるんだそうです。
それもこれも吹けば飛ぶようなCOMLに「協力して欲しい」とかかってきた、厚生技官からの電話がそもそものきっかけ。なにかと批判の対象になる霞ヶ関のお役人、なかでも厚生省への風当たりは薬害事件や福祉問題などで最近とくに強くなっています。けれども『10箇条』づくりに関わってみて、話のわかる人もいるんだ……ということを感じたりもしました。
それはさておき、患者が積極的に医療参加できるようなメッセージを作ろうと思いたったそもそものヒントは、厚生省が平成2年度に発表した「寝たきりゼロヘの10か条」。どんな内容かを尋ねたところ、何一つ手がかりが残っていないことがわかって、そこから小冊子の発行という具体的な動きが始まったといういきさつがありました。
情報のオスソワケ
昨年暮れに招かれた集いで『10箇条』のあれこれを話すなか、ヒントが「寝たきりゼロ……」だったことと、厚生省にも手がかりがなかったことのエピソードなどをお話ししました。先日、再び同じ主催者から別のテーマを与えられて出向いた祈、参加者のお一人が「6年前に交通事故で入院した病院の壁に貼ってあったポスターをメモったものがあったので……」と、わざわざ持参してくださいました。
来春から、いよいよ介護保険がスタート。高齢患者など在宅療養の周辺状況が、さらに厳しさを増す昨今。改めて……ということで、少し古い情報ですが転載し、情報のオスソワケといたします。
厚生省『寝たきりゼロヘの10か条』
- 脳卒中と骨折予防 寝たきりゼロヘの第一歩
- 寝たきりは 寝かせきりから 作られる 過度の安静 逆効果
- リハビリは 早期開始が 効果的 始めよう ベッドの上から訓練を
- くらしの中での リハビリは 食事と排泄、着替えから
- 朝おきて 先ずは着替えて 身だしなみ 寝・食分けて 生活にメリとハリ
- 「手は出しすぎず 目は離さず」が 介護の基本 自立の気持ちを大切に
- ベッドから 移ろう移そう 車椅子 行動広げる 機器の活用
- 手すりつけ 段差をなくし 住みやすく アイデア生かした 住まいの改善
- 家庭(うち)でも社会(そと)でも よろこび見つけ みんなで防ごう 閉じこもり
- 進んで利用 機能訓練 デイ・サービス 寝たきりなくす 人の和 地域の和
その方の記憶によれば、ポスターだけが貼ってあって、小冊子や別刷りのパンフレットのようなものは見当たらなかったとか。「やはり小冊子があるといいです。病院通いの手提げ袋に入れて、いつも待ち時間に読んでます。もっともっと多くの人たちの手に届くよう、ガンバッテください」と、励ましの言葉まで頂戴しました。
いま『10箇条』の小冊子は、講演で招かれる先の参加者の方々には助成金で作成した分を無料配布し、それ以外の希望者には印刷実費ということで100円のご負担で購入していただいています。近い将来、医療を受ける誰もが当たり前に持っている状況になるまで、さらに普及の努力を重ねたいと思います。