辻本好子のうちでのこづち

No.049

(会報誌 1999年1月15日号 No.101 掲載)

そろそろ止めませんか?「患者のため」

 新年あけまして、おめでとうございます。
 新しい年の幕開けが「101号」と幸先よく、秋には10年目を迎えます。今年がどんな年になるのか、イヤイヤどんな一年にするのか? 医療を取り巻く周辺を思うと気分は暗くなるばかりですが、誰かが何とかしてくれるという発想から、一人ひとりがそれぞれに自分はどうしたいか? と、発想の転換をするには絶好のチャンス。と、考えるとちょっぴり気分も前向きになり、勇気が湧いてくるような気がします。

さらなるステップアップを目指します

 COMLの基本の「き」は、日常の医療現場のもっとも層の厚い、ごくごく一般的な患者の立場から発言をすること。不安を抱えた患者や家族には「賢い患者になりましょう」と背中を支える応援団。そして、患者のなまの声を医療現場に届ける語り部。ただ、これまでは、与えられるチャンスを待つだけで、COMLから仕掛ける努力は決して十分ではありませんでした。
 言い訳にしかなりませんが、スタッフはわずか3人。素敵なボランティアの仲間たちもそれぞれに忙しい“本職”を抱え、当然ながら限界があります。でも1月から新人スタッフが増えました。仕事に幅と厚みが加わって一筋の光明が見え、少しでもご支援にお応えできるよう新たなチーム体制でさらなるステップアップを目指します!
 電話相談や病院探検隊、SP活動にも新たなボランティア参加の“明るさのきざしのきざしの胎動がある”ような気がしています。今年はぜひ「あなた」も活動にご参加ください!

「私はどうしたいか」を考える年に!

 さて新年を迎え改めて基本の「き」を考えるなかで、私の胸に浮かぶのは『患者のため』という言葉。これまでも、じつにさまざまな立場の方がこの言葉を語る場に遭遇しました。目前に迫った「介護保険」、病院と診療所が連携して患者を安心させようという「病診連携」、薬剤情報提供の義務化と投薬の相互監視を強化する「医薬分業」。そして「日帰り手術」や「包括支払方式(いわゆる定額医療)」、さらにはレセプトやカルテの「医療情報の開示」など。こうした問題が議論されるとき決まって出てくるのが『患者(利用者)のために……』。
 もちろんほとんどの場合、何らかの形で医療の提供側に立った方々の発言。患者の立場にしかなれない私はそのたびに「べつに頼んだわけでもないのに……」と、妙に白けてしまったり、ときには反発すら覚えたりして、ずっとこだわり続けてきたキーワードです。
 ところが昨年12月9日、朝刊を読んでいた私は思わず「ほんとうに患者のため?」と新聞に問い返してしまいました。日本医師会・日本医師連盟の一面広告で『患者さんの負担ばかりが増える制度を認めることができますか?』と問いかけている広告だったのですが、私には患者の自己負担増と薬価差益の縮小で経営が厳しくなったお医者さんたちの“悲鳴”に聞こえてしまったのです。
 もう『患者のため』って言うのは止めませんか。
 もちろん医療は“患者のため”にあるわけですが、言われる立場の息苦しさ。それは言われる側に立たなければわからない痛みでしかないのかもしれません。誰だって自分の身が一番大切に決まっています。「よい仕事をするため」と「安心と納得の医療を受けるため」について、患者と医療者とでそれぞれの胸の内を本音で語り合おうではありませんか!
 そのためにも、今年もさらに一人ひとりが「まず自分はどうしたいのか?」を考える、そんな企画を考えて行きたいと思います。