辻本好子のうちでのこづち
No.075
(会報誌 2001年5月15日号 No.129 掲載)
ぜひ皆さんの声を届けてください
冷静に本音で語り合いたい
漠然とした不安、息苦しいほどの閉塞感を一気に打ち破った政権の変革。さすがの長期安定政権も揺らぎを感じ、民意を無視することができなかったのでしょうけれど、前途は限りなく多難。医療問題も同様で、変革のうねりがあらゆる場面で起きています。COMLへも「医療安全対策検討会議」や「臨床研修のあり方検討部会(仮)」への委員委嘱の打診が厚生労働省から届くなど、これまで一方的に“与え”てきた行政がようやく重い腰をあげ、医療を受ける側の意見を十分に汲み取る必要を感じ始めているようです。
時代の大きな曲がり角に直面して、誰もが「変わらなくっちゃ!」と思ってはいる。でも、いったいどう変わればいいのか、どう変わるべきなのか。具体的な方向性は一向に見えてこない。もちろん政治も医療も決して簡単な問題ではないし、口角泡を飛ばす人の意見は時に過激になったり、あるいは妙に偏ってしまうことだってなくはありません。混沌とした状況のなかで、私たち一人ひとりが何をすべきか。それはやっぱり冷静に、それぞれの本音を語り合ってみることだと思います。
最近、さまざまな場面で患者の立場として発言する機会が増え、与えられるテーマについてあれこれ考え、悩めば悩むほど深刻にもなり、出口が見えなくなってしまうことがあります。 11年前、患者が受け身から主体的な医療参加に目覚め、意識を変えることで「患者の手で日本の医療を変えよう!」と、COMLという「語り合いの場」が誕生しました。その場はじつに多くの人々に支えられて、いまも存在しつづけているのですから、あとは一人ひとりが主人公になっておおいに語り合うだけです。
語るべきテーマは山積
たとえば情報開示の問題について。患者になったら何を知りたいのか。患者の立場であればどんな情報をどんな形で手に入れたいと思っているのか。そうした患者の希望を阻む医療現場の問題が何であり、少しでも問題を解決して事態を前進させるためには、いったい何が必要なのか。
あるいは医療事故やミスに関して。患者としていま何が不安なのか、どうして不信感を膨らませてしまうのか。そうした不安や不信感に対して、医療側に何を望み、どう対応されたら安心できるのか。医療現場の内部告発を待つだけではなく、医療の不確実性や限界を医療者自身が勇気を出して赤裸々に語れるようにするためには何が必要か。また、それが当たり前になるには、何を改革すべきか。
終末期医療や最先端医療の問題、そして、医学生や研修医など、次代の担い手である若き医療者たちに何を望むか、などなど。いまや私たちが考え、語るべきテーマは山積しています。
医療を受ける立場と医療を提供する立場が、それぞれに忌憚のない思いを語り、立場と役割の違いをしっかりと認識し合いながら、目指すゴールを共有する。医療も看護も人と人との間でおこなわれる行為であり、協働する人間関係を積み重ねる作業であるだけに、語り合うことを抜きには考えられません。
COMLの役割を支え、厳しく育てていただくためにも、もっともっと会員の皆さまのなまの声を届けていただきたいと思います。