辻本好子のうちでのこづち

No.068

(会報誌 2000年10月15日号 No.122 掲載)

11年目——“組織”としてスタートします!!

フォーラムで見えたCOMLの課題

 満10周年の記念フォーラムも無事終了。そして、新体制のもとに11年目への第一歩がスタートしました。
 フォーラムにご参加いただいた方からは、「難しかったが勉強になった、すばらしい内容だった」と絶賛の声。差額ベッド料の“あいまい”は、医療全体から見ればほんの小さな問題です。しかし議論を深めてみると、その小さな切り口の向こうから、さまざまな問題が浮かびあがってきました。たとえば医療消費者が受け身のまま、被害者意識で不平不満をいっているだけではダメだということ。根拠に基づいた情報を手がかりに、冷静な判断力と主体的な行動力を身につけることがいかに重要か。そしてさらには、破綻寸前の国民皆保険の現状や、模索が始まった混合診療の是非。また高齢社会に向けた医療システムの再編成など、厳しい現実にしっかりと目を向けて、どうあって欲しいかという患者の声をあげることの必要性など。なによりCOMLが今後取り組むべき課題が、見事なまでに示唆された機会にもなりました。

運営委員・世話人体制に

 さて活動スタートからずっと今日まで、「COMLは何をやってるの?」と問われるたびに、どう説明すれば理解していただけるかとずいぶん悩んできました。なにしろ前例がないのですから、「○○のような」と例えて説明することもできません。税務署に「屋号・COML、業種・患者自立支援業」と申告したときにも、受付の職員が「??」と面食らったのですから、おそらく前代未聞、意味不明だったに違いありません。
 電話相談の「なまの声」を医療現場に届けたい一心で、患者塾やフォーラム、そして病院探検隊やSP(模擬患者)など、患者の思いを具体的な「形」にしながら輪を広げ、仲間たちと共に文字通り行動で示してきた10年でもありました。情報も知識も知恵もない、気持ちを言葉に置き換える言語能力もないことが、かえって活動の広がりにつながったのですから、なんとも愉快な話ではありませんか。
 しかし、思っていることをすべての人に理解してもらうことはしょせん無理だということや、ときには諦めも肝心だということも教えられました。ただ、どうしても「わかってもらいたい」と思う人には、ともかく具体的な手がかりを示し、“その人”がほんとうに理解・納得してくれるまで懸命に「わかってもらいたい」メッセージを伝えつづけました。わき目を振る余裕すらなく、目の前に与えられる課題をただ必死にこなす毎日。どうしても思いや言葉が届かず、理解してもらえない切ない気持ちや辛さも数限りなく経験しました。
 活動の「形」は見えてきても組織の「形」が見えないことで、ずいぶん厳しい批判を受けました。たしかに会員制も敷かず、組織も定款もなかったのですから、あらぬ噂をたてたくなるのは人情かもしれません。しかし、そうした経験から「足を引っ張り合うのではなく支えあうこと」「“違い”を攻撃したり批判するのではなく認め合うこと」の大切さを学ばせていただくこともできました。
 今年1月、意思決定機関がなかったことから、何度かの話し合いを重ねました。その結果、ようやく9月17日に組織が誕生して、運営委員会・世話人体制がスタート。11年目へ向かう記念すべき折り返し地点で、36名の運営委員の誕生と定款の成立という悲願が達成しました。新たな組織の誕生を支えるメンバーの多彩さ、これこそがCOMLそのものです。 COMLを支える新メンバーに心より感謝し、これからは与えられる役割をともかく精一杯努力したいと思います。どうかよろしくご支援くださいますよう、心からお願い申しあげます。