辻本好子のうちでのこづち

No.047

(会報誌 1998年11月15日号 No.99 掲載)

エイズ拠点病院の評価に探検隊が参加

NPOとして新たな旋風を

 12月1日からNPO法が施行されますが、寄付金の優遇措置のないうちは何のメリットもなく、COMLはしばらく成り行きを静観していたいと思います。ところで法案の成立の裏には、NPOと行政や企業との連携によって新時代を築くことへの期待が大きくあります。COMLが厚生省の研究活動に参加して「医者にかかる10箇条」を発行したことは、まさにそうした時代の“さきがけ”でもあったわけです。
 なにしろ研究班の活動スタート時の構想は、「10箇条」の項目だけを発表して終わる計画だったのです。そこへ患者の立場として小冊子の発行を提案したのですが、担当官には「成果物を作るのはいいが、どうやって配布するか?」という素朴な疑問がありました。そもそも彼らにボランティア作業という発想は露ほどもなく、余分な業務が増えては困ると最初から逃げ腰。もちろん提案した責任もありましたが、そのとき私の目の前にCOMLの日常を支えるステキな仲間たち一人ひとりの顔がクッキリと浮かんでいました。
 「発送作業はCOMLに任せてっ」と胸をたたいたことで“患者の自立の応援歌集”ともいえる小冊子の発行が決まり、いまや増刷に増刷を重ねてついに10万冊突破。出版業界でいう「ベストセラーの殿堂入り」を果たす、今日の結果を生む第一歩がその瞬間に始まったのです。まさしくCOMLという小さなNPOが行政と連携したことで、ささやかなれど医療現場に新たな旋風を巻き起こし、小さな風穴も明こうとしています。

患者の視点でハードとソフトをチェック

 そして、今夏、再び。「医療への患者参加を促進する情報開示と従事者教育の基盤整備に関する研究」研究班への参画要請があって、9月、10月の患者塾でカルテ開示にまつわる話し合いを展開したことはすでにご報告しています。その後、さらに「エイズ拠点病院の機能評価に関する研究」への研究協力の要請が届き、COMLのボランティア活動に新たなページが加わっています。
 現在、全国にはエイズ患者の治療を行う8つのブロック拠点病院と361の地域拠点病院があります。この研究活動は「厚生科学研究・エイズ対策研究事業」の一環として、各病院を4〜5名の評価者が訪問して病院の機能をチェックするのが目的。COMLへの協力要請は、これまで4年間の病院探検隊活動で培ってきたノウハウと医療消費者の視点。「見て、体験し、感想を伝えて欲しい」ということにあります。
 じつは昨年からスタートした厚生省の外郭団体の財団法人・日本病院医療機能評価機構の審査には、まったく患者の視点は入っていません。機構が誕生する5年ほど前にそのことを知って「批判するよりも行動を!」と、COMLの行動原則にのっとって誕生したのが病院探検隊。これまでに11ヵ所の病・医院と老人保健施設や特別養護老人ホームをボランティア仲間と“探検”してきた実力が試される機会でもあります。
 各地のエイズ拠点病院の評価にはCOMLから2名が参加します。そこで期待され、また果たすべき役割は。
 「ひょっとして……?」という不安を抱えて受診した患者の視点。設備やスタッフの対応といった病院のハードとソフトの両面を、患者の立場でチェックすることです。さらにSP(模擬患者)活動で培ってきた能力も活用され、公衆電話で受診方法を問い合わせたり、実際に受診したりして採血検査を受ける患者役を演じたりもします。
 すでに訪問した病院を加え、年内に5、6ヵ所が予定されています。前日夕方の打ち合わせで一泊二日の行程。メンバーにはかなりの負担ですが、とりあえず活動が元気にスタートしたご報告です。