辻本好子のうちでのこづち
No.025
(会報誌 1997年1月15日号 No.77 掲載)
“自分らしさ”に磨きをかける1年にしましょう
消費税率5%アップ、そして医療費の自己負担増など、めでたいはずの年明けの、ほんのすぐ先で私たちを待ち受けている「いのち」や「からだ」の問題は、決して明るいものばかりではないようです。それはさておき、とりあえず、新年明けましておめでとうございます。今年もどうかよろしくご支援くださいますよう心よりお願い申しあげます。
日常生活にも管理や指導?
ほぼ30年間「成人病」と呼んできた、心臓病や脳卒中、さらには高血圧症や糖尿病など、いわゆる治りにくい治らない病気の総称を「生活習慣病」と改める、と昨年の暮れに厚生省が発表しました。病気になって医療費を無駄使いしないための予防。そうした大義名分のもとの管理や指導が、私たちの日常生活の隅々にまで忍び寄ってくるような気配を感じます。
喫煙や飲酒、そして日々の運動量や食事内容などについて「かくあるべき」と、模範的な指針が示されるのでしょうか。まさか罰則規定が用意されているとは思いませんが、仕事にかまけて結構好い加減な生活を送っている私には、なにやら気がかりでなりません。なんでも呆けを防止するためには、元気な時からの規則正しい生活とバランスのよい食事、そして、趣味を持って積極的に地域社会に関わっておくことが大切とか。
そういえば厚生省のお役人の不祥事をきっかけに、国家公務員が関連業者とつき合う際の倫理規定が事細かく示されるようなご時勢。「どんな生活をしていると病気にかかるかの自覚を促したい」とする厚生省の思惑は、図らずも時代の要請なのかもしれません。確かに病気になったときでも、自分のことが自分で決められないような患者たち。そんな国民だから小学生や中学生前の生活指導が必要と、厚生省が考えたとすれば、いやはや、なんとも情けない話ではありませんか。
自分のことは自分で決めたい
楽しい友との語らいの、あるいは仕事のあとの疲れを癒すビールの量までをも誰かに決められるなんて、私はまっぴらご免です。喫煙が、がん発生に大きく起因しているということは嫌というほど聞かされてはいますが、「止めることのストレスの方がよっぽど身体に悪い」という愛煙家の言葉にも妙に共感を覚えてしまう私です。つまりは他人に迷惑をかけないような心掛けさえしてくれたなら、喫煙も飲食もその人自身が自分で決めたらいいことのはず。もちろん病気になりたくない人が自己規制することは大切とは思いますが、努力しない人を白い目で見るような風潮だけは作りたくないナと思っています。生活価値観がこれほどまでに多様化しているなかで、みんながみんな「右にならえ!」とばかりに同じ方向を向いて“正しい生活”を営んでいることの方が、かえって怖いような気がしてなりません。
さてさてインフォームド・コンセントのキーワードと必要性は、ようやく社会に受け入れられたように思います。つぎは、いよいよ“中身づくり”のとき。 COMLとしてもこの一年、さまざまな企てを楽しみたいと思っています。読者の皆さまもそれぞれの“自分らしさ”にさらなる磨きをかけて、どうぞ素敵な一年をお過ごしくださいますように!!