辻本好子のうちでのこづち

No.183

(会報誌 2010年6月15日号 No.238 掲載)

“雨”からの出発

 20年前、活動立ちあげの文字通り“COML最初のイベント”の日。大阪直撃の大型台風で新幹線もストップ、東京から駆けつけてくれるはずの発起人や発言者らが足止めをくらいました。参加申し込みのあった人たちからも次々と会場宛てに欠席の電話連絡。開催断念寸前まで追い込まれました。当時、企画も運営も実質私一人で切り盛り、自然災害を前になすすべもなく茫然自失。胃に穴の開く痛みを感じながら、なんとか予定の2時間遅れで開催にこぎつけたのは、苦〜い思い出です。
 その後しばらく「それでも、お前はほんとうに(COMLの活動を)やる気なのか?」と閻魔様に尋問されている夢にうなされて、汗びっしょりで目覚めたことが何度もありました。その後もイベントのたびに雨にたたられ、ついに『雨女』の称号を授けられた私です。このたびの20周年記念イベントも数日前から天気予報が気にかかり、「かなり激しい雨」になる予報。あがきようもないまま覚悟するしかなく、ああ今年もまた……と、ただただ天を恨むばかり。ご参加いただく皆さまにほんとうに申し訳ないほどの激しい雨でその日の朝を迎えました。
 最悪の天候をついて参加くださった仲間たちとの有意義な一日のあれこれは、ホームページのブログ(http://coml-blog.cocolog-nifty.com/blog/2010/05/index.html)で感謝を込めてご報告させていただいています。本欄では「拡大患者塾」で1時間、話題提供として話させていただいたなかから、とくにCOMLの“これから”の夢と希望についてご報告させていただきます。

30年目に向けての課題

 難問山積ながら、とりあえず患者・市民にとっての医療テーマを「医療連携」「地域が主役」とし、30年目を目指すCOMLの課題をつぎの5つとします。

 1 電話相談体制の更なる拡充
 2 SP(模擬患者)活動の医学教育(卒前、卒後)への参加
 3 地域医療の支援(病院探検隊活動の普及)
 4 患者塾の学習充実(政策提言につなぐ)
 5 医療ボランティアの養成と活動展開

 まずはCOMLの活動の柱である電話相談、今年度は新たなメンバーが多数参画。昨年度の「医療で活躍するボランティア養成講座」の修了者の希望者が、すでに高いハードルの研修を終えて対応の第一歩を歩み始めています。ゴールの見えない過酷な役割への果敢な挑戦、収益事業には程遠い見事なまでに地味な活動、しかし、COMLの真骨頂! 会員の皆様の支援をいただきながら、さらに充実させていきたいと願っています。
 つぎに2年後は活動20周年を迎えるSP活動。現在は全国80の大学医学部・医科大学で4年生が臨床実習に出る前の共用試験のOSCE(客観的臨床能力試験)でSPが利用・活用されています。しかし、ある種の通過儀礼と化し、形骸化のそしりも免れず、卒後の臨床研修では患者とのコミュニケーショントレーニングはほとんどおこなわれていません。今年度、文部科学省の医学教育コア・カリキュラム検討会が再開し、私も委員の役割を与えられています。OSCEだけでなく学部6年間はもとより、前期・後期の卒後臨床研修のプログラムにもぜひSPを利用してもらうべく提言の努力をします。そのためにもSPの増員と質的上が大きな課題。教育担当者との協働でさらなる充実を図りたいと願っています。
 地域医療の支援については、地域の医療は地域の人々が「守り、育て、支える」をモットーに、20年間のCOMLが活動してきたノウハウを集大成して地域に広げること。たとえば病院探検隊、なにもわざわざ大阪からCOMLメンバーが出動するまでもなく、病院の周辺の地元の人々が「苦言も呈する病院の応援団」になればいい。年に1〜2度、まさに患者目線で地元の病院をめぐり、改善のヒントに役立つ提言をする活動を全国に広げたい。患者・市民としてどういう視点を持ち、何を、どのように見て、病院管理者やスタッフヘ有効なフィードバックをする。そのためには何を心がければいいのかなど、COMLが大切にしてきた想いを集大成して地域へ広げたいと思います。
 そして、もちろん患者塾のさらなる展開です。「賢い患者になりましょう」を合言葉に、語り合う場の提供を今後も努力し続けます。2012年度には介護保険と診療報酬の同時改定がおこなわれます。選択を迫られる私たち国民が何を望むのか? 保険料のアップを受け入れるのか、公費の割合を増やすのか、はたまた給付を見直すのかなど、負担と給付を見据えた議論が必要です。決して他人事ではない、身近な問題として大いに語り合い、政策提言につなげる議論を展開したいと願っています。
 さらには昨年度スタートした「医療で活躍するボランティア養成講座」のさらなる展開です。前述した活動展開を拡充するためには仲間の輪を広げることが不可欠。本年度、前期は事務所を拠点に、後期は東京、金沢、札幌、下関への“出前”を計画。人材養成のみならず、受講修了者がそれぞれの地域・地元の病院などで活動できるバックアップにも力を注ぎます。また、4年ごとの「日本医学会総会」が2011年4月に東京で開催。ビッグサイトの展示会場で9日間「地域医療を支える患者・住民活動の“見本市”」の実行委員を務めることになっています。また学会最終日には、同じテーマのシンポジウムを開催する企画担当の一員。多くの市民・患者の方々と意見交換する絶好の機会、COMLも参加予定、皆様とお目にかかれることを楽しみにしたいと思っていますのでご予定ください。
 以上に加え、もちろん『医者にかかる10箇条』の普及促進、そして本誌前々号で宣言させていただいた「地域へ!!」を課題に努力します。『再来(サライ)』は「次の次」の意。大切なことは答えを出すことでなく、次の次を信じて歩み続けること、語り続けることだと心に誓って、COMLの次の次、30年目を目指します!