辻本好子のうちでのこづち
No.079
(会報誌 2001年9月15日号 No.133 掲載)
医療制度改革の柱は「患者が主人公」
いまこそCOMLの真価が問われるとき
この秋、COMLは12年目の歩みを進めます。
いみじくも、棚上げされていた医療制度改革論議が本格的に再燃するにあたり、審議メンバーの任を受け、改めてCOMLの役割の大きさを認識させられています。
この先、私たち患者・医療消費者を待ち受けているのは、さらにさらに厳しい医療状況です。来春の医療制度改革のテーマは「患者が医療の主人公」。私たちが待ち望んできた、利用者本意、満足度の高いサービス、安心、効率的、透明性、公平性と耳ざわりのいいキーワードは並んでいます。が、その一方、いかに医療費の伸びを抑え、増えるばかりの医療費を、誰が、どう負担するか。高齢者医療費の問題も併せ、最大級の困難な課題も提起されています。つまりは患者の自助努力、自己責任、自己決定という「患者の自立」が、これまで以上に強く要求されているのです。
40年近い公的保険の平等原則のもとで、医療は国が施し、与えてくれる、だからお任せすればいいと受け身のまま、自分のことを自分で決める学習も訓練もしてこなかった人たち。さらには時代を突き抜けるIT列車に乗り遅れ、どんどん情報から遠ざかってしまっている人々。そんな患者や家族がひとりぼっちにならないよう、COMLのささやかな活動がどう支えられるか? 権利擁護と政策提言をテーマとするアドボカシー(自分らしく生きる力を高める支援)活動を目指すCOMLの真価が、いまこそ問われるときを迎えたと身震いする思いです。
結論は「賢い患者になりましょう!」
このたびの医療制度改革は5つの大項目と、それぞれの施策として具体的な小項目があげられています。まずは『情報開示とIT化の促進』。ここではレセプトやカルテの電子化と医療の標準化、複数の医療機関におけるカルテの共有化と有効活用(つまりセカンド・オピニオンの推進?)、医療の第三者評価の推進と広告規制の緩和が並んでいます。
つぎの『診療報酬体系の見直し』には、定額払い制度の拡大(“松竹梅”のような医療の定食化?)、公的医療保険の対象範囲の見直しなどに加えて、医療機関の経営情報の開示も。
そして3つ目の『保険者機能の強化』は、レセプト審査や支払いを保険者(保険証の発行元)ごとが担当することで医療内容のチェック機能を高めようという目論見。つづく『競争原理の導入と効率化』では、病院の理事長が必ずしも医者でなくてもいいとし、株式会社方式を取り入れることを検討。さいごの『その他』には、医療従事者の質を高める教育・研修の改革や薬の問題などなど。
めまいを起こしそうなほど山積する問題。しかもそこには、さまざまな団体の複雑な利害関係も絡み合っています。議論の中心にいる人たちが、いくら患者のため、患者のためと言おうとも「人の為」と書くと「偽り」という字になるのですから、やはり人任せにするわけにはいきません。とはいえ、医療に限らず、制度改革が検討されるたびに国民不在という批判や反省が飛び交うものの、これだけ複雑だと参加しようにも手がかりすら見えません。しかし、もう、私たちはそんな甘えたことを言っているわけには行かない状況に追いやられているのです。
この夏、改革の一つひとつの項目について、COMLの活動とこれまでのささやかな主張とを重ねあわせてじっくり考えてみました。結論はやっぱり、単純明快「賢い患者になりましょう」でした。情報誌、電話相談、患者塾、病院探検隊、模擬患者、講演活動といった“手立て”をフル活動させて、さらなる歩みを一歩一歩前進させ、できる範囲で精一杯努力をつづけたいと思います。