辻本好子のうちでのこづち
No.065
(会報誌 2000年6月15日号 No.118 掲載)
10周年の新しい取り組み
「COMLカード」を病院に設置
現場からの申し出で実現
満10周年を迎えたCOMLの新しい取り組みの第一歩が、5月半ばからスタートしました。大阪府立の病院の内科で患者さんや家族が自由に持ち帰ることのできる「COMLカード」が常時、設置されることになったのです。
カードのそもそもの発案は今月号巻頭インタビューに登場のHドクター。今年1月下旬、「白血病を抱えた患者さん・家族の悩みや不安に寄り添って欲しい。ついてはCOMLを紹介するパンフレットのようなものはありませんか?」と、突然の思いがけないお申し出。やはり忙しい医療現場で患者の不安をゆっくり聴くことは難しいのでしょう。また不満がなくても医療者に話したくない胸の内、さらには別の意見を聞いてみたいという患者の気持ちがあるのも当然のこと。「じつは、昨年のCOMLフォーラムにも参加して……」、このグループなら大丈夫と思って今回の依頼。率直な申し出に感激し、とりあえずその日は活動紹介のパンフレットを持ち帰っていただきました。
ところがその後、日常業務の忙しさにまぎれて思うように素案づくりが進みませんでした。大きさ一つにも「もっと小さい方が持ち帰りやすいんじゃないか?」「いや、あんまり小さいとまぎれてしまうかもしれない」「病院のカウンターはどこも狭いから、やっぱり小さいほうが……」と喧喧囂囂。また、そもそもCOMLなるものがいったい何者か、存在すら知らない患者さんにどうアピールするかなど、あれこれ議論した末に「ともかく、まずは実験的ということで、走りながら考えよう!!」という結論に達し、COMLのロゴマークをデザインしてくれたデザイン事務所のボランティア的協力を得て、連休明けにできあがりました。大きさは、ちょうど『医者にかかる10箇条』の小冊子と同じ二つ折りのB6判になりました。
普及には医療側の協力が不可欠
つぎは、カードを手にした患者さんが「電話相談をしてみよう」という気になれるか、どうかの問題。この最初のハードルを越えるには、カードを置いてくれる医療側の協力が必要です。そこでカードができあがってすぐ、こんどは私のほうから病院を訪ねました。Hドクターから病棟看護師長の紹介を受けて、カードの趣旨を説明させていただきました。すると師長さんはすでにCOMLのことはよくご承知で、話は早く、とりあえず届けた翌日から常時設置されることになりました。ただ、その後の状況や患者さんの反応はどうか、といった“実況見分”はしていません。しかも今のところ、とくに「カードを見て……」といった相談も届いていないので、いわゆるマーケットリサーチをいずれ近いうちに……とも思っています。
というわけで、いまのところは大阪府立の病院だけですが、近い将来、一つでも多くの病院の協力を得ていきたいと思っています。そして、いつかは「COMLカード」を設置する病院リストを作って、それが患者の病院選びの指針の一つになるような展開をして行きたいと思っています。ただしカードを手にした患者さんがどんどん電話相談をしてこられたら……事務所の電話がパニックになる。それが次なる、大きな、大きな課題です。
それでなくても連日の医療ミスや事故の報道で、このところ電話相談が急増して月300件を超え、事務所は連日パニック状態がつづいています。もしカードが普及したら、当然に相談はいま以上に増えるわけですから、COMLの責任は相談体制の充実。そのためには「人と場と資金」が必要にもなってきます。
患者さんの自立支援という10年前に描いた私の夢は、しょせん「はかない夢?」なのか。微力なCOMLのような活動ごときで実現できることではないのかと新たな悩みも同時に抱えています。